水質有害物質特論では1~17章で出題傾向が明確にあります。
出題傾向の記事は下の記事をご参照ください。
1~17章において、ほぼ毎年出題される章があります。
今回解説する14章の有機塩素系化合物排水の処理からもほぼ毎年出題されます。
そこで、本記事で内容を理解し、公式の本で詳細を読み込むことをオススメします。
(※あえて内容を省いているところがあるので、ご注意ください。)
14章の内容
14章の内容は有機Cl化合物排水の処理方法を説明した章です。
有機Cl化合物は水に不溶、低沸点、不燃性という特徴があります。
処理法は主に4つあります。
- 曝気法
- 活性炭吸着
- 酸化分解法
- 生物分解法
また、有機Cl化合物として、基本的にトリクロロエチレン(C2HCl3、TCE)およびテトラクロロエチレン(C2Cl4、PCE)を扱います。
曝気法
先ほど述べたように、有機Cl化合物は難溶性、低沸点という特徴があります。
そのため、曝気することで揮発し排水から分離することができます。
活性炭吸着法
微量の有機Cl化合物を除去する方法として、活性炭も使用されます。
ただし、活性炭吸着法は吸着量が少ないという欠点があります。
酸化分解法
有機Cl化合物を分解する処理法も存在します。
適切な酸化条件下では二酸化炭素CO2および塩化物イオンに分解されます。
酸化剤は過マンガン酸塩が使用されます。
酸性から中性で使用することができ、常温で適用できます。
ただし、PCEとTCEで分解速度が異なります。
PCEはTCEよりも分解速度が1/10~1/30と遅いです。
なお、PCEとTCEの分解速度の違いから分かるように、塩素数が多いと分解率は低くなります。
二酸化チタンを触媒として溶存酸素下で光を照射することで分解することもできますが、
分解速度は遅いです。
しかし、過酸化水素存在下で紫外線を照射すれば分解速度が6~8倍になるといわれています。
原位置分解法または原位置浄化法
土壌中の有機Cl化合物を処理する方法も提案されています。
土壌に過マンガン酸塩溶液を注入して酸化分解する方法や鉄粉を主体とする反応剤を地盤に入れ還元無害化する方法があります。
生物分解法
生物で分解する方法もあります。
特に、土壌や地下水の浄化方法として塩素化エチレン分解細菌を利用したバイオレメディエーションが原位置分解技術として注目されています。
ここで、好気分解と嫌気分解で分解方法が異なることに注意してください。
好気分解の場合、トリクロロエチレンは最終的に水とCO2と塩化物イオンに分解されます。
一方、嫌気分解の場合、トリクロロエチレンはトリクロロエチレン→ジクロロエチレン→ビニルクロロチレン→エチレンと
塩素原子が1つずつ外れる還元的脱塩素化反応でトリクロロエチレンが分解されます。
また、処理方法には二つあります。
土壌に栄養剤を注入して、土着の細菌を活性化させるバイオスティミュレーションと
塩素化エチレン分解細菌を地下水中に注入するバイオオーグメンテーションです。
まとめ
有機Cl化合物を分解せずに処理する方法は二つあります。
- 曝気法 :有機Cl化合物を揮発させて処理
- 活性炭吸着法 :活性炭に吸着させる。
吸着量が少ないのが欠点。
また、分解して処理する方法も二つあります。
過マンガン酸塩で分解します。
最終生成物は二酸化炭素CO2および塩化物イオンです。
塩素数が多いほど分解率は低くなります。
トリクロロエチレンの生物処理法も重要な点です。
ポイントは二つあります。
- 好気分解 :最終生成物は水とCO2と塩化物イオン
- 嫌気分解 :C2HCl3 → C2H2Cl2 → C2H3Cl → C2H4
と塩素が1つずつ取れる還元的脱塩素化反応が起こります。
また、処理方法も二つあります。
- バイオスティミュレーション :地下水に栄養剤を注入し、土着の最近を活性化
- バイオオーグメンテーション :塩素化エチレン分解細菌を地下水に注入