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ピペットで有機溶媒を吸う方法

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大学で化学を専攻している学生や研究者の方は試薬を採取する際によくピペットを使用すると思います。

このピペット、手早く定量出来るため非常に便利ですが、油など粘性の高い液体やアルコールなど揮発性の液体はなかなかうまく吸うことが出来ません。

粘性が高いと気泡が入り込んできてしまったり、揮発性だと吸った後にポタポタ溶液が垂れてしまいます。
これらの扱いにくい液体を上手に吸う方法をご紹介します。

結論から言ってしまうと、「マイクロマン®」というピペットを使用するのがおススメです。

ピペットの種類:エアーディスプレイスメント方式

ピペットには大きく分けて二種類あります。
エアーディスプレイメント方式」と「ポジティブディスプレイメント方式」です。


一般的に使用されるピペットはエアーディスプレイメント方式です。

この方式の特徴は溶液を吸った際にピペットチップの上部が空気で満たされていることです。


この空気のことをエアークッションと呼びます。
このエアークッションは温度などの外部環境によって伸縮します。
揮発性の液体では上部の湿度や気圧が変化します
その結果、ピペットチップから溶液が垂れることになります。

ピペット操作の工夫

以上のことから揮発性などの液体は吸うことが難しいのですが、ある工夫をすることで比較的吸いやすくなります。

リンス法

ピペットのプッシュボタンは二段階あります。

  1. まず初めに一段目までプッシュボタンを押し、溶液の中に浸漬します。
  2. 浸漬後、ゆっくりプッシュボタンを元の位置に戻します。
  3. 元の位置に戻したら再度ゆっくりプッシュボタンを一段目まで押します。
    この際チップは溶液の中に浸漬させたままです。
  4. あとは②と③を数回繰り返します。
  5. 数回繰り返したら通常通り吸って、試験管などに吐き出します。

この②と③の操作を繰り返すことでピペットチップの中が溶液の蒸気で満たされます。


すると、溶液の揮発による影響が緩和され比較的簡単に溶液を吸いやすくなります。

リバース法

この方法をご説明します。

  1. まず、プッシュボタンを二段目まで押し、溶液の中に浸漬します。
  2. 次にプッシュボタンをゆっくり元の位置まで戻します。
  3. 試験管などにプッシュボタンを一段目まで押し込みます。
  4. チップに溶液が残っているので、チップごと廃棄するか廃液容器に吐き出します。

最初に二段目までプッシュボタンを押し込んでいるため、通常よりも余計にチップ内に溶液が入り込みます。


こうすることで、溶液が垂れる影響を少なくしています。

ピペットの種類:ポジティブディスプレイスメント方式

ポジティブディスプレイスメント方式の特徴はピペットチップです。

普通のピペットチップは中空構造になっていますが、この方式のチップは中がピストンで占められています。

イメージとしてはシリンジまたは注射器です。
チップ内部にピストンが存在するため溶液を吸ったときチップ内部は溶液で埋め尽くされます



そのため、揮発性の溶液を吸いやすい構造になっています。
有機溶媒のように揮発性の溶液や粘度の高い溶液を取り扱う際にはこのポジティブディスプレイスメント方式がオススメです。

種類

ポジティブディスプレイスメント方式のピペットは以下になります。

ギルソン社:マイクロマン®、マイクロマンE®

有名どころのギルソン社の製品です。

通常のピペットとほぼ同じ使い勝手で使用することが出来ます。
マイクロマンとマイクロマンEの違いは容量可変後にロックが出来るか出来ないかです。

この商品は容量を変える際にプッシュボタンを回します
マイクロマンEでは本体下部にロックボタンが設置されており、このボタンを押しながら出ないと容量を変えることが出来ない設計となっています。
そのため、プッシュする際にうっかりプッシュボタンを回転させることが出来ないようになっています。

エッペンドルフ社:Multipette® M4
有名どころのエッペンドルフ社の製品です。

この商品はユニークで一回ごとに吸って吐いての繰り返しではなく、一回で大量に溶液を吸い、数回に分けて吐き出すという仕様になっています。
そのため、繰り返し作業を行う必要がある場合には効率を大きく高めることが出来ます。

ただし、一回ずつチップを交換する必要のある作業などでは逆に不便となります。
また、繰り返しチップを交換することを考慮していないためか、チップの交換の際にいちいちチップを持って本体に接続する必要があります。
とはいえ、繰り返し作業が多いという方は非常に助かる商品となっています。

有機溶媒や粘度の高い溶液を取り扱っている方は是非ともお試しください。

まとめ

粘性が高い溶液や有機溶媒など揮発性の高い溶液をピペットで取り扱う方法をご紹介しました。

一般的なピペットを使用する場合はリンス法リバース法が適しています。

しかし、それ以上にギルソン社のマイクロマンを使用することで、簡単に取扱いしにくい溶液を扱うことができます